[SS]我が友とともに [story]
先日、ハードディスクの整頓をしていた時に、見つけ出したものです。
実は、蒼明学園で愛美の設定ミニ小説を書こうとして(書ききれてないけど)、
まるまる1シーン没にした部分がありまして(^^;
そのまま、ゴミ箱行きなのもちょっと惜しいかな、ということで、こちらに転載。
一応、加筆修正しつつ……あ、いや、決してあまり更新ができてない言い訳じゃないです……はい……
「<月>」
「私には月子、って名前があるんだから、そっちで呼んでっていってるでしょ。」
「<月>」
「……なによっ! <女帝>」
いつも折れるのは、月子。
「我が友が、教授からの伝言に気づいた」
「……うん。分かってた……」
「そう」
「……で、どうなの?」
「心配ならば、ここへ来た時、顔でも見れば良い」
「やっぱり、来るんだ」
「我が友は、込められた教授の想いに、必ず気づく」
「教授はあれからずっと<魔術師>の事、心配してたもんねー」
そうね、と呟きながら、<女帝>は寂しそうに床に目を落とした。
「人は何かのきっかけで、心に隙が生まれる。その隙間に何かが入り込むことで、
心の闇は広がり、間違った方向に<力>を使おうとする」
「それ、教授がよく言ってた言葉じゃない! 懐かしい!」
「私たちに能力の使い方を言い聞かせるために、何度も繰り返し……」
目を閉じ、あの頃を思い返すと、二人とも思わず笑みがこぼれた。
あたたかな時間が流れていた、あの頃。
首を横に振りながら、大きなため息が一つずつ、こぼれ落ちる。
もう、あの頃は戻らない。
「……<女帝>、教授は……まさか、<魔術師>に……」
「万が一、<魔術師>が暴走したとしても、我らの主であるがゆえに、我らにはそれを
止めることはできない」
「<魔術師>は暴走なんてしないわよっ!」
ベッドに座り、シーツを両手でぎゅっとつかむ月子が目に入ると、優しく微笑んだ。
「言い換えよう。<魔術師>が何かの手違いで道を外したとしても、自身でそれに気づく
ことはないし、我らが気づかせることもできない」
「まさか……」
「だが、22の<魔宝>すべてを扱える素質を持っている我が友ならば、道を外したことに
気づかせることができる」
「教授の心配は、<魔術師>が敵対することだったとでも?」
<女帝>はそれには答えず、さらに言葉を続けた。
「<魔術師>の言う<時>が近づいてきた」
「もうすぐ、なの!?」
「そのようだ」
「あたしは、どうしよう……」
「好きにすればいいんじゃない」
「ひっどい言い方ね!!」
「……と、めがねかけたひょろっとしたヤツが言うと思っただけよ」
「な、なんでアイツなのよっ!」
「もう少し素直になった方がいいと思うわ」
「私は、<魔術師>だけだもんっ!」
「ふふふっ。アイツが来てるって分かったら、きれいに髪をとかして出てくるクセして」
「髪は女の命なのっ!」
両頬を思い切り膨らませる月子に思わず笑みがこぼれる。
「んもぅっ……! で、<女帝>はどうするの?」
「私の心は決まっている」
月子から目を外すと、顔を窓の外に向けた。
「<女帝>……」
「もう一度、この足で立って歩いてみたい」
「え??」
「望んでこの姿になったが、楽しそうに館内を駆け回る<月>を見ると、また大地を走りたくなった」
「何よ、それっ! 私のせいなの?」
「そういう意味ではない。気分を害したのなら、謝る」
頭をわずかに下げる。
めったなことでは人に頭を下げない彼女にしては、これは十分過ぎる。
「……いや、別にそこまで……」
「そうか。それならいい」
「で?」
「それを我が友に話した。怪訝そうな顔をして、
『魔宝だって生きてるんだから、願って自分の希望通りになれないはずがない』」
「さっすが、教授の血を引いてるわねぇ~。」
今度は、月子をまっすぐに見た。
「その時がきたら、<月>を含めて、すべての<魔宝>を敵に回すかもしれない。
それでも構わぬ。我が身、我が心は、すべて、我が友、マナミとともに。」
実は、蒼明学園で愛美の設定ミニ小説を書こうとして(書ききれてないけど)、
まるまる1シーン没にした部分がありまして(^^;
そのまま、ゴミ箱行きなのもちょっと惜しいかな、ということで、こちらに転載。
一応、加筆修正しつつ……あ、いや、決してあまり更新ができてない言い訳じゃないです……はい……
「<月>」
「私には月子、って名前があるんだから、そっちで呼んでっていってるでしょ。」
「<月>」
「……なによっ! <女帝>」
いつも折れるのは、月子。
「我が友が、教授からの伝言に気づいた」
「……うん。分かってた……」
「そう」
「……で、どうなの?」
「心配ならば、ここへ来た時、顔でも見れば良い」
「やっぱり、来るんだ」
「我が友は、込められた教授の想いに、必ず気づく」
「教授はあれからずっと<魔術師>の事、心配してたもんねー」
そうね、と呟きながら、<女帝>は寂しそうに床に目を落とした。
「人は何かのきっかけで、心に隙が生まれる。その隙間に何かが入り込むことで、
心の闇は広がり、間違った方向に<力>を使おうとする」
「それ、教授がよく言ってた言葉じゃない! 懐かしい!」
「私たちに能力の使い方を言い聞かせるために、何度も繰り返し……」
目を閉じ、あの頃を思い返すと、二人とも思わず笑みがこぼれた。
あたたかな時間が流れていた、あの頃。
首を横に振りながら、大きなため息が一つずつ、こぼれ落ちる。
もう、あの頃は戻らない。
「……<女帝>、教授は……まさか、<魔術師>に……」
「万が一、<魔術師>が暴走したとしても、我らの主であるがゆえに、我らにはそれを
止めることはできない」
「<魔術師>は暴走なんてしないわよっ!」
ベッドに座り、シーツを両手でぎゅっとつかむ月子が目に入ると、優しく微笑んだ。
「言い換えよう。<魔術師>が何かの手違いで道を外したとしても、自身でそれに気づく
ことはないし、我らが気づかせることもできない」
「まさか……」
「だが、22の<魔宝>すべてを扱える素質を持っている我が友ならば、道を外したことに
気づかせることができる」
「教授の心配は、<魔術師>が敵対することだったとでも?」
<女帝>はそれには答えず、さらに言葉を続けた。
「<魔術師>の言う<時>が近づいてきた」
「もうすぐ、なの!?」
「そのようだ」
「あたしは、どうしよう……」
「好きにすればいいんじゃない」
「ひっどい言い方ね!!」
「……と、めがねかけたひょろっとしたヤツが言うと思っただけよ」
「な、なんでアイツなのよっ!」
「もう少し素直になった方がいいと思うわ」
「私は、<魔術師>だけだもんっ!」
「ふふふっ。アイツが来てるって分かったら、きれいに髪をとかして出てくるクセして」
「髪は女の命なのっ!」
両頬を思い切り膨らませる月子に思わず笑みがこぼれる。
「んもぅっ……! で、<女帝>はどうするの?」
「私の心は決まっている」
月子から目を外すと、顔を窓の外に向けた。
「<女帝>……」
「もう一度、この足で立って歩いてみたい」
「え??」
「望んでこの姿になったが、楽しそうに館内を駆け回る<月>を見ると、また大地を走りたくなった」
「何よ、それっ! 私のせいなの?」
「そういう意味ではない。気分を害したのなら、謝る」
頭をわずかに下げる。
めったなことでは人に頭を下げない彼女にしては、これは十分過ぎる。
「……いや、別にそこまで……」
「そうか。それならいい」
「で?」
「それを我が友に話した。怪訝そうな顔をして、
『魔宝だって生きてるんだから、願って自分の希望通りになれないはずがない』」
「さっすが、教授の血を引いてるわねぇ~。」
今度は、月子をまっすぐに見た。
「その時がきたら、<月>を含めて、すべての<魔宝>を敵に回すかもしれない。
それでも構わぬ。我が身、我が心は、すべて、我が友、マナミとともに。」
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