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[SS]番外編:ready?--描写トレーニングver0.08 [story]

ということで、描写のトレーニングです。
今回で9回目。

こうして初回
比べてみるとえらいことになってますね(^^;

全く同じシチュエーションです。
自分の中にあるイメージがどんどんと広がっているので、「修正」という形ではありますが、
そのイメージを書き込んでいく、というのを心がけるようにしています。

前半、もたついてたところを少し修正。
付け加えた部分を修正。覚書の意味もこめて付け加えです。

題材は、蒼明学園版のready?です。

書き込んでみたらばこうなる、という感じです。
徐々に新たな物語が心の中に浮かんでいく感じなので。。。いつになったら終わることやら(^^;
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-. ready?

はるか遠くから漂うかすかな潮の香り。
少女がそちらに目を向けると、リニアのライトが帯のように光っていた。
家々の窓や、商店街にも明かりが灯る。
そろそろ、月光がはっきりと見える時刻になるだろう。

瀬戸内海を埋め立てて造られた学園都市、蒼明学園。
その中で海から最も遠くに位置する屋外型学習施設「文化の丘」。
縄文時代から昭和初期までの体験ができる施設だ。

「この学園内で好きな場所を選べ」

その言葉に、少女が真っ先に選んだのが、ここ文化の丘、平安エリアだった。
寝殿造の屋敷の前に広がる庭園には、樹齢1000年以上とも言われる大樹がある。
取り壊し目前の旧家から植え替えて、まだ1年足らず。
園芸委員会が丹精こめて世話をして、今根付くのを待っている。

理事長自らが植え替えを指示したというその樹にもたれ、彼女はリズム良く扇を左手に
叩きつけていた。

「1000年を見守ってきた大樹に、これからの子供たちを見守ってもらいたい」

理事長らしい理由だ、少女はそう感じていた。

――私がここを選んだのは、ひょっとしたら、この樹に見守ってもらいたかったのかもね。

いつもとは異なる状況に、誰かに見守ってもらいたかったのかもしれない。
扇を懐にしまうと、自然にふぅぅっと息がこぼれた。

―― 大丈夫、大丈夫。。。

首元を風が通り抜け、潮の香りが鼻先を掠めた。
少女は軽く首をすくめると、慌てて左腕にかけていた淡い桃色のストールを開く。
その輝きに微笑むとぱさっと羽織る。そのまま、すばやく首を隠すようにストールを開き、
帯に気をつけながら左手で背中を整えると、端を持ち胸の前で軽く合わせる。

このストールは、猛獣対策ネットに使用されている金属を細く加工し、糸状によりあわせ、
織って作成した生地を使っている。少々のことでは、破れない。

右手でストールの端についているフリンジのふわりとした、滑らかな手触りを
感じて思わず唇の端から笑みがこぼれる。

左手首を返し、文字盤を確認する。
赤く細い皮のバンドに少し違和感を覚えつつ、目を細めてアラビア文字を見つめた。

針は19時少し前を指していた。

濃紺の地に薄紫の大きな花が舞う浴衣も、この日のためにつくったものだ。
ストールより少し太い糸を使って、厚めの生地を作り、何が起きても問題ないよう、
万全な状態にしてある。
もちろん、蘇芳色の帯も。

そんなことが起きないように願う――いや、しなくちゃいけない。
ここで、血を流すことなどあってはならない。
化粧もしていない色白の頬がピンクに染まり、唇はつややかな赤色にかわっていた。
目元は少しつりあがり、軽く見開いているのだろうが、それを見ることはできない。
いつも通りのサングラスが、少女の視線をさえぎっている。

樹の冷たさが、背中から伝わる。
どこからか風が吹き、枝がゆっくりと揺れる。
「冷静になれ」、そう、少女に語りかける。

――大丈夫。ありがとう。

心の中で呟いた。

首をわずかに左に傾けると、短い前髪をかき上げ、深呼吸を数回。
最後に大きく息を吐き出すと、つまさきで地面を突こうとして、慌てて止めた。

浴衣には下駄を合わせたいところだが、サンダル。
柄の部分は帯と同様蘇芳色の落ち着いた絵柄だが、浴衣と同じ生地で作った花を
クリップで留め、若さを出している。

もう一度、軽く息をつくと、持っていた籐かごをあけた。
少し太めの竹でできたもち手と、財布やハンカチを入れても文庫本が入る余裕がある、
という理由で選んだお気に入りの一点だ。
片手で赤紫の紐を解き、中に生徒会専用腕時計の文字盤が見えていることを確認すると
少し表情を緩めた。そのまま紐を縛り、籐かごの口を閉める。

どーーーん!

遠くから聞こえる花火の音が、彼女に19時を告げた。

「愛美ちゃんのところに、カメラっ子が一人配置されるらしいでぃーす。紀家くんとも連携済ですー」
「まだそっちに行ってないみたいだから僕たちで押さえとくよ」
「それじゃ、二人は学校に行くのね」
「もう移動してまぁーっす」

サングラスの耳にかけた部分に埋め込まれた超小型のレシーバーから、気心知れた
仲間の声が聞こえてきた。

「女の子の方は俺にまか……」
「天草くん一人には任せられないですから、私と有ちゃんがついていきますのでゆかりさんも、愛美さんも
 安心してください」
「地下倉庫には3人ね」
「あのあの、天草先輩、ねずみ……大丈夫なんですか?」
「そんな、罪もない女の子が閉じ込められてるっていうのに……」
「ちゅうちゅう」
「きゃぁっ、たすけてぇっ♪ って、佑苑、何すんだよっ!」
「もう、相変わらずねぇ……」
「ゆかりさん……私たち二人だけですでに向かってますから」
「おい、待てよ、俺を置いていくなって!!!」

思わず笑いそうになるが何とかこらえる。

「都筑、すまないが男子寮B棟の封鎖はぎりぎりになりそうだ」
「宗祇くん、どれくらいになりそうなの?」
「花火を観にいく生徒が多くてな、フロア封鎖に変更して10分後完了予定だ」
「そういうわけで、すまない、予定より5分遅くなる」
「それなら問題ないわ。私から東先生には予定より5分遅れるようにお願いしておいたから」
「……江島の読みに感謝だな」
「できることなら愛美ちゃんと会わないで済むほうが助かるしね」

大きく深呼吸を一つ。
意外に大きな息遣いに愛美は肩を震わせた。

「しかし、生徒会を手玉に取るとは、計画によほどの自信があるようだな」
「そうね。信吾くん。でも、愛美ちゃんは言ってたわ。彼にはこの計画は立てられない。
 おそらく何か裏があるはずだ、と」
「それでわざわざのっている、というわけか」
「えぇ。それに、自由に連絡の取れない愛美ちゃんと私たちの動きが合わせられる」

盗聴器と盗撮用のカメラをつけて、対策を話し合うわけにいかない。
連絡する内容を最小限にとどめ、かつ、お互いの状況が分かるようにしなくてはならない。

「しかし、江島くんが和装というのも動きが不自由だな」
「そういう要望だから仕方ないのよ」
「相手は江島くんの扇子を気にしているのか」
「……コンピュータ同好会では投げないようにはしてたみたいだけど、
 もぐらたたきとかするとわかっちゃうから」
「江島の扇子を武器にしろ、という指示がないだけマシだったな」
「確かにそうね。ナイフで、ってことだったから」
「ということは、江島くんの扇子が2種類あることには気づいてなさそうだな」
「そうね。そこまでは知らないと思うわ」

通常の扇子と、武器として使用する扇子。
愛美はいつも2種類の扇子を携帯している。

もちろん、今日の扇子は武器用だ。
紅色の和紙で作られた扇面の上部は、骨と同じ材質の鈍く輝く金属で縁取られている。
つまり、閉じたまま叩けば相手はケガをし、開いて投げれば切り裂かれる。
さらに、金属で作られているにも関わらず、重さは通常の扇とほぼ変わらない。

この日のためにメカに関して右に出るものはこの世にいないと言われる
白河静音生徒会会計が愛美に造った武器の1つだ。

「ヤツは、江島がスピアを使えるのも知っているのか」
「知っていると思うわ。彼も一連の事件の経験者だから」
「そう考えると江島の言うとおり、裏があるな」
「えぇ。誰かに洗脳されているか、もしくは……」
「脅されているか」
「えぇ」

左耳に入れた超小型イヤホンが一瞬の間を伝えた。

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2,944文字です。

today's BGM -- 自然の雨音 
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