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[SS]番外編:-.ready?--描写のトレーニング [story]

久しぶりに書こうとしましたが、その前にトレーニングが必要だろうということで、
前回やってみたものを全く同じシチュエーションで書いてみました。
もちろん、前回の状況があるので、修正、という形ですが、頭の中で状況がしっかり
イメージできている分、描写の間に彼女の想いを入れたりできて、話が膨らんでいきそうですね。

感覚を描写する、ってのはほんと難しいけど、大切ですね。
ほんと、自分の感覚を「あぁ、いまこう感じてるんだな」って感じながら、生きていかなきゃもったいないっすね。

題材は、蒼明学園版のready?です。

書き込んでみたらばこうなる、という感じです。
これが、あれから一ヶ月後の、今のあたしの限界(笑)

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-. ready?

-. ready?

彼女は一人、大樹にもたれながら扇子を開いたり閉じたり……もてあそんでいた。

背後には、蒼明学園が誇る文化施設「慈恵殿」。
もともとは京都の外れにあった建物だが老朽化のため取り壊すところを、朱鳳
理事長が宮大工を呼んで移築・改修・増築し、園内の施設として使用している。
本来の寝殿造の姿を取り戻した「慈恵殿」は、「平安文化の丘」とも呼ばれ、
今では、茶会や、雅楽のコンサート、十二単の着付け体験など人気の施設だ。

彼女がもたれているこの樹も、京都から植え替えたものだ。
園芸委員会が主体となって、土壌も入れ替え、根付くのを待っている。

――この樹が見た今までの日本の歴史を生徒が知り、今後の歴史を作っていく
  生徒をこの樹に見守ってもらえるなんてこの上ないことじゃないか。

植え替える際に理事長はそうおっしゃったそうだ。

――私がここを選んだのは、ひょっとしたら、この樹に見守ってもらいたかった
  のかもね。

もてあそんでいた紅の扇を片手で軽く閉じると、しっかりと懐に入れた。
扇面は紅、骨は黒光りした金属。閉じて叩けば相手はケガをするだろう。
詳しいことは彼女も良く知らないが、日本科学の最先端を行く生徒会会計が、
彼女のために徹夜で軽量化を図ったと風の噂で知った。
甲斐あって、この扇子は普通の扇子と変わらぬ重さとなっていた。

熱っぽい風が頬を撫でた。
真夏の夜とはいえ、丘の上は少し肌寒い。

襟を軽く押さえ整えると、左腕にかけていた淡い桃色のストールをひらいた。
腕を小刻みに動かし、手のひらの中にいくらかたくし込む。
ぱさっと羽織ると、ラメの入ったストールが月光に輝きかすかな光を帯びた。
すばやく首を隠すようにストールを開き、帯に気をつけながら左手で背中を整えると、
端を持ち胸の前で軽く結わえた。
ストールの端についているフリンジのふわりとした、だが、滑らかな手触りを
楽しむと思わず唇の端から笑みがこぼれた。
この生地は多少荒っぽく振舞っても問題ないように丈夫なものを選び、撥水加工を
施してあった。加工してもシルクのような滑らかな肌触りが、彼女の一番のお気に入りだ。

左手首を返し、文字盤を確認する。
赤く細い皮のバンドに少し違和感を覚えつつ、目を細めてアラビア文字を見つめた。

針は19時少し前を指していた。

濃紺の地に薄紫の大きな花が舞う浴衣も、この日のためにつくったものだ。少し厚手の
生地を使い、何が起きても問題ないよう、金属が編みこまれているという噂も聞いた。
もちろん、帯にも。

そんなことが起きないように願う――いや、しなくちゃいけない。
ここで、血を流すことなどあってはならない。
化粧もしていない色白の頬がピンクに染まり、唇はつややかな赤色に染まっていた。
目元は少しつりあがり、軽く見開いているのだろうが、それを見ることはできない。
いつもどおりサングラスをして、視線をさえぎっている。

樹が、背中から伝わる冷たさで、彼女に冷静になれ、と語りかける。

――大丈夫。ありがとう。

心の中で呟いた。

首をわずかに左に傾けると、短い前髪をかき上げ、深呼吸を数回。
最後に大きく息を吐き出すと、つまさきで地面を突こうとして、慌てて止める。

本当は下駄を履きたかったところだが、動きやすさを重視してサンダル。
もちろん、これも特注だ。柄の部分は帯と同様蘇芳色の落ち着いた絵柄だが、
浴衣と同じ生地で作った花をクリップで留め、若さを出している。

もう一度、軽く息をつくと、籐かごをあけた。持ち手が少し太めの竹でできており、
財布やハンカチを入れても文庫本が入る余裕がある、という理由で選んだバッグだ。
片手で赤紫の紐を解くと帯と共布の内布を開き、中身を確認するとそのまま紐を縛り、
籐かごの口を閉める。

どーーーん!

遠くから聞こえる花火の音が、彼女に19時を告げた。

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1,553文字です。

原稿用紙3枚にはなりましたね。結局、愛美という言葉も使わず、すべて「彼女」と「独白」で
構成しました。しかし。。。なんか、おきそうですよね(笑)

today's BGM -- なし 
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