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[SS]番外編:-.ready?--描写のトレーニング [story]

久しぶりに書こうとしましたが、その前にトレーニングが必要だろうということで、
初回2回目3回目4回目
やってみたものを全く同じシチュエーションで書いてみました。
もちろん、前回の状況があるので、修正、という形ですが、頭の中で状況がしっかり
イメージできている分、描写の間に彼女の想いを入れたりできて、話が膨らんでいきそうですね。

感覚を描写する、ってのはほんと難しいけど、大切ですね。
ほんと、自分の感覚を「あぁ、いまこう感じてるんだな」って感じながら、生きていかなきゃもったいないっすね。

題材は、蒼明学園版のready?です。

書き込んでみたらばこうなる、という感じです。
最後の部分が少し付け加えられてます。こんな感じで新たな物語が紡いでいけたらいいなぁ。


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-. ready?

遠くを見ると、かすかにきらめきが見えた。
海。
特にあらぶることもなく、ざわめくこともない穏やかな海。
海に面した学園都市、蒼明学園。
授業も終わり、生徒が家々にたどり着く頃、窓には明かりが灯る。
そろそろ夜の始まりだ。

ほとんどの生徒が学校から帰宅したこの時間。
彼女がいる「文化の丘-平安-」にも人影は見えない。
今日のような天気の良い週末なら、この丘から見える夜景を楽しむ人で
にぎわうのだが、今日は特別だ。

この広い庭内に、彼女一人。
鈍く光る扇子を左手に叩きつけながら、夜空を見つめた。

取り壊し寸前だった京都の旧家を移築する際、庭木も一緒に植え替えた。
彼女がもたれているこの大樹は、樹齢1000年以上ともいわれる大木だ。
園芸委員会が主体となって、土壌も入れ替え、この地に根付くのを待っている。

――この樹が見てきた今までの歴史を生徒が知り、
  今後の歴史を作る生徒をこの樹が見守る、ありがたいことだ。

植え替えを決めた時、理事長はそうおっしゃったそうだ。

――私がここを選んだのは、ひょっとしたら、この樹に見守ってもらいたかった
  のかもね。

手にした扇を一瞬見つめると、しっかりと懐に入れた。
骨は金属のように黒光りしているが、重さは通常の扇子と変わらない。
紅色の和紙で作られた扇面は、骨と同種の金属で上部を縁取られている。
閉じたまま叩けば相手はケガをするだろうし、開いて投げれば切り裂くだろう。
もちろん、誰もが認めるメカフェチ、生徒会会計・白河静音の自信作だ。
できる限り軽量化を進め、武器としての威力は増加させたと聞いている。

涼しげな風が頬を撫でた。
真夏の夜とはいえ、丘の上は少し肌寒い。

襟を軽く押さえ整えると、左腕にかけていた淡い桃色のストールをひらいた。
腕を小刻みに動かし、手のひらの中にいくらかたくし込み、ぱさっと羽織る。
ラメの入ったストールが月光に輝きかすかな光を帯びた。
すばやく首を隠すようにストールを開き、帯に気をつけながら左手で背中を整えると、
端を持ち胸の前で軽くもった。
ストールの端についているフリンジのふわりとした、だが、滑らかな手触りを
楽しむと思わず唇の端から笑みがこぼれる。
この生地は多少荒っぽく振舞っても問題ないように丈夫なものを選び、撥水加工を
施してあった。加工してもシルクのような滑らかな肌触りが、彼女の一番のお気に入りだ。

左手首を返し、文字盤を確認する。
赤く細い皮のバンドに少し違和感を覚えつつ、目を細めてアラビア文字を見つめた。

針は19時少し前を指していた。

濃紺の地に薄紫の大きな花が舞う浴衣も、この日のためにつくったものだ。少し厚手の
生地を使い、何が起きても問題ないよう、金属が編みこまれているという噂も聞いた。
もちろん、蘇芳色の帯にも。

そんなことが起きないように願う――いや、しなくちゃいけない。
ここで、血を流すことなどあってはならない。
化粧もしていない色白の頬がピンクに染まり、唇はつややかな赤色にかわっていた。
目元は少しつりあがり、軽く見開いているのだろうが、それを見ることはできない。
いつもどおりサングラスをして、視線をさえぎっている。

樹の冷たさが、背中から伝わる。
冷静になれ、と彼女に語りかける。

――大丈夫。ありがとう。

心の中で呟いた。

首をわずかに左に傾けると、短い前髪をかき上げ、深呼吸を数回。
最後に大きく息を吐き出すと、つまさきで地面を突こうとして、慌てて止める。

本当は下駄を履きたかったところだが、動きやすさを重視してサンダル。
もちろん、これも特注だ。柄の部分は帯と同様蘇芳色の落ち着いた絵柄だが、
浴衣と同じ生地で作った花をクリップで留め、若さを出している。

もう一度、軽く息をつくと、籐かごをあけた。持ち手が少し太めの竹でできており、
財布やハンカチを入れても文庫本が入る余裕がある、という理由で選んだバッグだ。
片手で赤紫の紐を解くと帯と共布の内布を開き、中にいつもの腕時計の文字盤が
みえていることを確認するとそのまま紐を縛り、籐かごの口を閉める。

どーーーん!

遠くから聞こえる花火の音が、彼女に19時を告げた。

「愛美ちゃん、カメラっ子が一人配置されるらしいでぃーす。紀家くんとも連携済ですー」

左耳に入れているレシーバーから聞こえた声に思わず声を出しそうになるが、
慌てて飲み込む。

―― ここでバレたらおしまいよ……

大樹にもたれて、大きく深呼吸1つ。

樹の冷たさにもう一度われに返る。

「カメラは、担当がまだそっちに行ってないみたいだから僕の方で押さえとくよ」
「愛美ちゃん、女の子の方は俺にまか……」
「天草くん一人には任せられないですから、私と有ちゃんがついていきますので安心してください」
「すまないが男子寮B棟の封鎖はぎりぎりになりそうだ」

―― 己を信じて、仲間を信じて

「宗祇くん、どれくらいになりそうなの?」
「帰宅途中の生徒が多いからな、フロア封鎖に変更して10分後完了予定だ」
「……予定より5分遅くなるのね」

―― 5分か……。

「それなら問題ないわ。私から東先生には予定より5分遅れるようにお願いしておいたから」
「……江島の読みに感謝だな」
「できることなら愛美ちゃんと会わないで済むほうが助かるしね」

もう一つ深呼吸。
意外に大きな息遣いに愛美は肩を震わせた。

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2,141文字です。

原稿用紙5枚超えましたね。この後を続けていかなくちゃ(笑)

today's BGM -- なし 
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