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[SS]番外編:ready?--描写トレーニングver0.07 [story]

ということで、描写のトレーニングです。
今回で8回目。

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全く同じシチュエーションです。
自分の中にあるイメージがどんどんと広がっているので、「修正」という形ではありますが、
そのイメージを書き込んでいく、というのを心がけるようにしています。

前半、もたついてたところを少し修正。
付け加えた部分を修正。覚書の意味もこめて付け加えです。

題材は、蒼明学園版のready?です。

書き込んでみたらばこうなる、という感じです。
こんな感じで新たな物語が紡がれるのは、いつになることやら(^^;
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-. ready?

はるか遠くから漂うかすかな潮の香り。
ふと目を向けると、移動するリニアのライトが帯のように光った。
家の窓や、商店街にも灯る明かり。
もうすぐ月の光がはっきりと見えるようになるだろう。

瀬戸内海を埋め立てて造られた学園都市、蒼明学園。
その中でも海から最も離れた所に位置する「文化の丘」。
平安時代エリアの真ん中にある庭園には、樹齢1000年以上とも
言われる大樹がある。
京都の旧家から植え替えて、まだ1年足らず。
園芸委員会が丹精こめて世話をして、今根付くのを待っている。

理事長自ら、植え替えを指示したというその樹にもたれ、彼女は
リズム良く扇を左手に叩きつけていた。

「1000年を見守ってきた大樹に、これからの子供たちを
 見守ってもらいたい」

そんな理由だったらしい。

――私がここを選んだのは、ひょっとしたら、この樹に見守って
  もらいたかったのかもね。

いつもとは異なる状況に、誰かに見守ってもらいたかったのかも
しれない。
彼女は、弱弱しく笑みを浮かべたが、手にした扇が視界に入ると、
唇を引き結び、しっかりと懐に入れた。

紅色の和紙で作られた扇面の上部は、骨と同じ材質の鈍く輝く金属で
縁取られている。
つまり、閉じたまま叩けば相手はケガをするし、開いて投げれば切り
裂かれる。さらに、金属で作られているにも関わらず、重さは通常の
扇とほぼ変わらない。
この扇はメカにかけては、右に出るものはこの世にいないと言われる
白河静音生徒会会計が彼女のために造ってくれた専用の武器だ。

懐をぽんっと叩くと自然にふぅぅっと息がこぼれた。

―― 大丈夫、大丈夫

首元を風が通り抜け、潮の香りが鼻先を掠めた。
彼女は軽く首をすくめると、慌てて左腕にかけていた淡い桃色のストールを
開き、ぱさっと羽織った。
ラメの入ったストールが月光に輝きかすかな光を帯びた。
すばやく首を隠すようにストールを開き、帯に気をつけながら左手で背中を整えると、
端を持ち胸の前で軽く合わせる。

右手でストールの端についているフリンジのふわりとした、滑らかな手触りを
感じて思わず唇の端から笑みがこぼれる。

多少荒っぽく振舞っても問題ないように丈夫な生地を選び、撥水加工を
施してあった。
数度切りつけられたくらいでは、破れない。

左手首を返し、文字盤を確認する。
赤く細い皮のバンドに少し違和感を覚えつつ、目を細めてアラビア文字を見つめた。

針は19時少し前を指していた。

濃紺の地に薄紫の大きな花が舞う浴衣も、この日のためにつくったものだ。少し厚手の
生地を使い、何が起きても問題ないよう、金属が編みこまれているという噂も聞いた。
もちろん、蘇芳色の帯にも。

そんなことが起きないように願う――いや、しなくちゃいけない。
ここで、血を流すことなどあってはならない。
化粧もしていない色白の頬がピンクに染まり、唇はつややかな赤色にかわっていた。
目元は少しつりあがり、軽く見開いているのだろうが、それを見ることはできない。
いつもどおりサングラスをして、視線をさえぎっている。

樹の冷たさが、背中から伝わる。
冷静になれ、と彼女に語りかける。

――大丈夫。ありがとう。

心の中で呟いた。

首をわずかに左に傾けると、短い前髪をかき上げ、深呼吸を数回。
最後に大きく息を吐き出すと、つまさきで地面を突こうとして、慌てて止める。

浴衣には下駄を合わせたいところだが、サンダル。
柄の部分は帯と同様蘇芳色の落ち着いた絵柄だが、浴衣と同じ生地で作った花を
クリップで留め、若さを出している。
これにも金属が埋め込まれているため、切り裂くのは至難の業だ。

もう一度、軽く息をつくと、持っていた籐かごをあけた。
少し太めの竹でできたもち手と、財布やハンカチを入れても文庫本が入る余裕がある、
という理由で選んだお気に入りの一点だ。
片手で赤紫の紐を解き、中に生徒会専用腕時計の文字盤が見えていることを確認すると
少し表情を緩めた。そのまま紐を縛り、籐かごの口を閉める。

どーーーん!

遠くから聞こえる花火の音が、彼女に19時を告げた。

「愛美ちゃん、カメラっ子が一人配置されるらしいでぃーす。紀家くんとも連携済ですー」
「カメラは、担当がまだそっちに行ってないみたいだから僕たちで押さえとくよ」
「それじゃ、二人は学校に行くのね」
「もう移動してまぁーっす」

サングラスの耳にかける部分に埋め込まれた超小型のレシーバーから、
仲間の声が聞こえてきた。

「愛美ちゃん、女の子の方は俺にまか……」
「天草くん一人には任せられないですから、私と有ちゃんがついていきますので安心してください」
「地下倉庫には3人ね……龍之介くん、大丈夫?」
「女の子を救うためならっっ」
「ちゅうちゅう」
「きゃぁっ、たすけてぇっ♪」
「もう、相変わらずなんだから」
「……とにかく、私たち二人だけですでに向かってますから」
「おい、待てよ、俺を置いていくなって!!!」

思わず笑いそうになるが何とかこらえる。

「すまないが男子寮B棟の封鎖はぎりぎりになりそうだ」
「宗祇くん、どれくらいになりそうなの?」
「帰宅途中の生徒が多いからな、フロア封鎖に変更して10分後完了予定だ」
「……予定より5分遅くなるのね」
「それなら問題ないわ。私から東先生には予定より5分遅れるようにお願いしておいたから」
「……江島の読みに感謝だな」
「できることなら愛美ちゃんと会わないで済むほうが助かるしね」

大きく深呼吸を一つ。
意外に大きな息遣いに愛美は肩を震わせた。

「生徒会を手玉に取ろうというのだから、彼の計画はよほど自信があるみたいだね」
「そうね。でも、愛美ちゃんは言ってたわ。彼にはこの計画は立てられない。おそらく、
 何か裏があるはずだ、と」
「それでわざわざのっている、というわけか」
「この計画通りに動く方が得策という判断ね」
「都筑くん。なぜ、得策になる?」
「私たちと連絡の取れない愛美ちゃんと私たちの動きを合わせられるからね」

盗聴器と盗撮用のカメラをつけて、対策を話し合うわけにいかない。
連絡する内容を最小限にとどめ、かつ、お互いの状況が分かるようにしなくてはならない。

「しかし、江島くんが和装というのも動きが不自由だな」
「そういう要望だから仕方ないのよ」
「相手は江島くんの扇子を気にしているのか」
「……コンピュータ同好会では投げないようにはしてたみたいだけど、
 もぐらたたきとかするとわかっちゃうから」
「扇子を武器にしろ、という指示がないだけマシだったな」
「確かにそうね。ナイフで、ってことだったから」
「ということは、江島くんの扇子が2種類あることには気づいてなさそうだな」
「そうね。そこまでは、知らない可能性が高いわね」

通常の扇子と、武器として使用する扇子。
愛美はいつも2種類の扇子を携帯している。

「割り込んですまない。ヤツは、江島がスピアを使えるのも知っているのか」
「知っていると思うわ。彼も一連の事件の経験者だから」
「そう考えると江島の言うとおり、裏があるな」
「えぇ。誰かに洗脳されているか、もしくは……」
「脅されているか」
「えぇ」

左耳に入れた超小型イヤホンが一瞬の間を伝えた。

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2,802文字です。

today's BGM -- 自然の雨音 
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